「嗅覚」「触覚」「味覚」を刺激するマーケティング

「嗅覚」「触覚」「味覚」を刺激するマーケティング

※2020年1月7日配信メルマガVol.53より抜粋(一部加筆修正あり)

人間が五感で受け取る情報量には差がある

人間の五感は「視覚→聴覚→嗅覚→触覚→味覚」の順に強く影響を受けると言われています。
強く影響を受けるということは、「視覚→聴覚→嗅覚→触覚→味覚」の順に受け取る情報量が多い、とも言い換えられます。
諸説ありますが、知覚に占める割合は、8割が「視覚」、1割が「聴覚」、残りを他の嗅覚で分けている、といった具合で、
「視覚」と「聴覚」からの情報量がほとんどなのだそうです。

一方で、「嗅覚」は、五感で唯一、感覚情報が感覚器官(鼻)からダイレクトに処理器官(脳)に直行する、根源的な性質を持っています。
また「触覚」は、生存に直結するためか、五感の中で最も早く発達します。
赤ちゃんがなんでも口に入れて舐めてしまうのは、舌からの「触覚」を通じて、物の質感を感じとるためと言われています。
「味覚」も、生後3~5ヶ月くらいから食べ物を受け入れるようになり発達して、味の好みが育ってきます。
これらに比べると「視覚」は、脳や神経の発達と関係があって、ゆっくり成長していきます。
(赤ちゃんは目があんまり見えていないと言われますね)

「嗅覚」「触覚」「味覚」は情報の質が濃い

要するに何を言いたいのかと言いますと、
普段我々は、「視覚」や「聴覚」を通じて、多くの量の情報を受け取り、影響を受けていますが、
「嗅覚」「触覚」「味覚」については、情報の質が濃く、
一度強い刺激を受けると、ずっと忘れずに記憶に残る
ということなんですね。

初めて訪れた海外の空港の匂いや、
好きな人と手を繋いだ時の感触、
小さい頃から食べてきたおふくろの味…
パッと思い浮かぶ方は多いのではないでしょうか。

感覚的には、「視覚」や「聴覚」は客観性がありますが、
「嗅覚」「触覚」「味覚」って、割と主観に寄っている感じがします。
この辺りが、記憶への残りやすさに関係しそうです。

嗅覚を刺激したマーケティング事例

ある企業が、ビジネスにおける匂いの効果の実験を行い、
自販機からチョコレートの香りをさせたところ、
チョコレートの売り上げが60%も上昇
したそうです。
同じ企業が、今度は立地の悪いアイスクリーム店の近くに、ワッフルコーンの匂いを出す装置を設置したところ、売り上げが50%も伸びたとのことです。

スターバックスも、店舗の近くを通るとコーヒーの良い香りがしてきて、つい誘われてしまいますが、
このコーヒーの香りを守るために、スタッフの香水使用を認めていないそうです。

つまり、「嗅覚」「触覚」「味覚」というのは、人の記憶に残す上で重要な感覚で、
これらを意識的に情報発信していくだけでも、
顧客や見込み客に「欲しい」「また買いたい」という気持ちを増幅させる可能性があるということです。

そして、「視覚」や「聴覚」と違って、
オンラインの、デジタルな情報では感じ取れない知覚なので、
オフラインの、アナログな、生の接触を持つことがいかに重要かがわかります。

昨今「OMO(Online Merges with Offline)(オンラインとオフラインの融合)」という概念が、
マーケティングにおいて頻繁に使われるようになりましたが、
これって、五感の特性を考えて情報の量と質を掛け算する施策なんですね。

高級ホテルや旅館では、廊下を歩いていても、ふんわりお香の香りがしてきたりしますね。
ANAのラウンジの香りは、ANAオリジナルのアロマを使っています。
素敵な外観や内装等は、写真や動画でも視聴できますが、
匂いや家具の感触や料理の味わい等は、実際に現場で体験した人にしか感じられません
実店舗やオフィスで、「嗅覚」「触覚」「味覚」を刺激して印象に残す何かを仕掛けておくというのは、
業種関係なく面白い効果がありそうです。

五感の知覚を活かしたブランディングと商標

ちなみに、五感による知覚は、
「あるもの」と「そうでないもの」を識別するのに役立ちます。
そして、自社と他社の商品やサービスを識別するものを「ブランド」といい、
法的な観点からは「商標」といいます。
したがって、五感による知覚に統一感を持たせて識別力を強化することは、
「ブランディング」
ということになります。

日本では、ブランド保護拡張のため、5年前から「音」の商標が登録できるようになり、
ようやく「聴覚」の識別力が法的に保護されるようになりました。

ただ、海外ではブランド保護の取り組みが一歩進んでいて、
「匂い(嗅覚)」や「手触り感(触覚)」「味(味覚)」が商標登録された例もあるようです。
(ex. 米国による、Play-Doh(プレイドー:小麦粉でつくった粘土)の香りの商標登録)
これらは客観的な基準を設けにくく、審査が難しいために保護対象にならないことが多いのです。

まあ商標登録できるかどうかは別として、
「人間の五感(脳、心理)」に働きかけることが、
ブランドや商標の原点であることは間違いないですね。

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