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意匠法における「一意匠一出願の原則」とは?
意匠法では「一意匠一出願の原則(意匠法7条)」が定められており、原則として1つの出願には1つの意匠しか含めることができません。
これは、審査の明確性や権利の安定性を確保するために設けられたルールです。
一方で、近年は同じデザインコンセプトを複数の製品に展開することでブランド価値を高める企業が増えており、これに対応するために導入されたのが 複数意匠一括出願手続 です。
一意匠一出願の原則(意匠法7条)の基本
原則の趣旨と意図
「一出願=一意匠」とすることで、出願範囲を明確にし、審査や権利解釈の混乱を避けることができます。
複数の意匠を1件の出願に含めてしまうと、権利範囲が不明確になり、紛争のリスクが高まるためです。
実務における一意匠一出願の具体例
- 家具の「椅子」と「テーブル」を1件にまとめて出願することはできない(組物の意匠の場合を除く)
- 同じ椅子でも脚の形状が異なるものは別々に出願する必要がある
複数意匠一括出願手続とは
制度の趣旨
意匠法施行規則2条の2により、2件以上100件以下の意匠登録出願を一つの願書で一括して提出できる手続が認められています。
これにより、複数の出願をまとめて行うことが可能となり、ブランド戦略やデザインシリーズの保護が効率的に行えます。
仕組みのポイント
- 1つの願書に含められる出願の数は2件以上100件以下
- 一括提出された各意匠登録出願は、それぞれ独立した出願として審査・登録される
- 便宜的にまとめて出願できるだけであり、1件の出願に複数の意匠を含める制度ではない
複数意匠一括出願のメリット
出願手続の効率化
複数の出願をまとめて一度に提出できるため、事務処理の手間が軽減されます。
管理のしやすさ
同じブランドコンセプトに基づく意匠群をまとめて出願できるので、企業内での管理が容易になり、戦略的なデザイン保護が可能です。
複数意匠一括出願の注意点
各意匠は独立した出願
一括提出しても、最終的にはそれぞれ独立した意匠出願として扱われます。
したがって、1件が登録されても他の出願が拒絶される可能性があります。
また、関連意匠出願とは違って、各出願に係る意匠が類似していなくても大丈夫です。類似している場合は、関連意匠の要件を満たせば関連意匠として出願することができます。
さらに、出願人が同一であれば、創作者が異なっていても問題ありません。
なお、新規性喪失の例外の適用手続や秘密意匠の請求は、一括出願全体で行う必要がある点に注意です。
手数料は件数分必要
便宜的にまとめて出願できる制度ですが、手数料は意匠(出願)ごとに必要です。
コスト削減というより、手続の簡便化のための制度と理解すべきです。
なお、手数料の支払いは一括で行わなければならないため、予算面での注意も必要です。
提出できない書類がある
施行規則により、特徴記載書など一部の書類は「複数意匠一括出願手続」では提出できません。
また、出願日が遡及する分割出願や補正却下後の新出願は、一括出願に含めることができません。
制度の制約を理解して利用する必要があります。
弁理士が解説する実務上のポイント
よくある相談事例
- 「新シリーズの家電をまとめて出願したい」
- 「同じブランドロゴを付する複数の製品のデザインを一括で保護したい」
こうしたケースに、複数意匠一括出願は有効です。
弁理士に依頼するメリット
- 制度の制約を踏まえた最適な出願設計が可能
- 後の拒絶リスクや手続不備を未然に防止
- ブランド戦略と連動した権利取得をサポート
まとめと結論
一意匠一出願と複数意匠一括出願の関係
一意匠一出願の原則は維持されながら、便宜的に2〜100件の出願をまとめて提出できる制度が導入されています。
これにより、シリーズ展開やブランド保護を効率的に行うことが可能です。
出願を成功させるために
複数意匠一括出願は便利な制度ですが、各出願が独立して審査される点や、提出できない書類がある点に注意が必要です。
弁理士に相談することで、制度を正しく活用し、効率的かつ戦略的なデザイン保護を実現できます。
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複数意匠一括出願や意匠出願全般についてのご相談は、弁理士までお気軽にどうぞ。
初回のご相談は無料で承っております。正確な出願で、あなたのデザインを確実に守りましょう。