内装の意匠権の例|登録事例で理解する「店舗・オフィス・車内等のデザイン保護」

内装の意匠権の例|登録事例で理解する「店舗・オフィス・車内等のデザイン保護」

店舗の世界観や売場づくりそのものを真似された――。
こうした“室内の見た目”を守るのが内装の意匠です。改正意匠法により、家具や什器の組合せ等からなる室内空間のデザインが、物品・建築物・画像とは独立した対象として登録できるようになりました。ここでは実在の登録例とともに、出願設計の勘所を弁理士目線でまとめます。


内装の意匠とは

  • 内装の意匠
    店舗、事務所その他の施設の内部であること
    複数の意匠法上の物品、建築物又は画像により構成されるものであること
    内装全体として統一的な美感を起こさせるものであること
  • 対象:店舗・オフィス・ショールーム・ホテル・病院・教室・車等の室内空間
  • 要件:新規性/創作非容易性/産業上の利用可能性などは、物品の意匠と同じ考え方で審査されます。ただし、内装の意匠には複数の物品等が含められ得ることになるので、一意匠一出願の原則については、これら複数の物品等が1つの意匠として認められるかどうかで判断される
  • 部分意匠室内の一部を「部分意匠」 として切り出して登録することも可能

実在の登録例

タイトル意匠(参考図)登録番号使われている場面
書店の内装(薄墨を付した部分を除く)意匠登録第1671152
(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社名義)
蔦屋書店(羽田空港店)の内装
オフィスの内装(赤色で着色された部分を除く)意匠登録第1785459
(株式会社イトーキ名義)
「ITOKI DESIGN HOUSE」のDecision Roomの内装
遊戯室の内装意匠登録第1783162
(チームラボ株式会社名義)
チームラボボーダレス内施設「タイフーンの上のエアリアルクライミング」の内装
自動車用内装(実線で表された部分のみ)意匠登録第1726492
(フェラーリ・ソシエタ・ペル・アチオニ名義)
フェラーリの内装(自動車用シート、コックピット及びドアの一部)

いずれも、室内空間としての統一的美感 が評価されている典型例です。


どんな場面で効く?

  • 単独の旗艦店・ポップアップ・ショールームの世界観を保護
    限定店舗でも、写真映えするゾーンや導線設計をコピーから守れます。
  • チェーン展開時の統一感担保
    同系統の什器・照明・サイン計画をまとめて抑え、軽微な改変での回避を難しく。
  • 出店スピードを落とさずブランドの一貫性を担保
    施工会社が変わっても、登録意匠を基準に設計統制がしやすい。
  • “映える”売場を資産化
    フォトスポット化したゾーンを部分意匠でピンポイントに保護。

出願設計のコツ

  1. 部分意匠で“肝”を実線化
    模倣されやすいだけを実線で特定。周辺は破線化して権利の芯を明確化。
  2. 関連意匠でバリエーションを面で保護
    バリエーションを関連意匠で網掛け。派生店舗や季節演出にも対応。
  3. 図面・写真の“見せ方”を整える
    • 基本は 斜視図+正面・背面・左側面・右側面・平面(必要に応じ断面)図。
    • 室内境界は二点鎖線、要部は拡大図
    • 意匠構成に含める要素は実線、含めない部分は破線等で峻別。
    • 施設(内装)の外側からの視点で表す方法と、施設の内側からの視点で表す方法が可能なので、いずれか又は組合せながら意匠が具体的に特定できるように表す。
    • 透視図法(パース図法)やアイソメトリック図法、正投影図法など、様々な手法を用いることが可能。
  4. 公開コントロール
    竣工前のティザーやメディア露出で新規性を落としがち。公開前出願が原則。ローンチ後もしばらく伏せたい場合は 秘密意匠(最長3年) を検討。

よくある落とし穴

  • 「機能で決まる配置」だけだと弱い
    避難・導線規制等に必然化された配置のみだと創作性で苦戦。意匠的工夫を示せる構成に。
  • 写真だけでの提出
    写真は有効ですが、線画図を併用した方が権利範囲が明確になり、審査・係争で有利になる場合も。
  • 施工差の“逃げ”
    デザイン変更による権利回避を狙われても、類似範囲でカバーされるよう、抽象度を設計段階で調整。

まとめ

  • 内装の意匠は、室内空間の美感を権利として確保できる強力な手段。
  • 部分意匠・関連意匠・秘密意匠を組み合わせると、模倣耐性と運用の柔軟性が大きく向上。
  • 竣工・公開の前から図面設計と出願計画を並走させるのが成功の近道です。

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