※2019年10月8日配信メルマガVol.40より抜粋(一部加筆修正あり)
「貝印」が意匠権を多数保有する理由
日本初の替え刃式のカミソリを製造し、現在も安全カミソリや家庭用包丁の国内トップシェアを誇る、No.1刃物ブランド、貝印。
創業111年の大変歴史のある企業ですね。
本社が私の事務所に近いので、勝手に親近感を抱いているのですが、
今年度の「知財功労賞」の「知財活用企業(意匠)」部門で表彰されたということで、
その知財戦略にも注目が集まっています。
国内の意匠登録として公開されているものは、831件もあり、
その他国外でも多数出願・登録されています。
なぜこんなに意匠(デザインの権利)が多いのでしょうか?
刃物はシンプルであるがゆえに、コモディティ化しやすい商品です。
コモディティ化しやすいということは、他社との差別化をする上で、
デザインの工夫を通じたブランドによる差別化が欠かせません。
そんな中で貝印は、世界初の3枚刃カミソリを開発したメーカーとして広く知られていますし、
各国の有名シェフとコラボしたデザインにて、包丁や調理器具を世界各国で展開しており、
デザイン開発の面で競合優位性を持っています。
一方、意匠は見た目のデザインそのものを守る権利なので、
見た目が類似する製品を効果的に排除することができます。
権利としてわかりやすく、税関での水際取締もとても有効に機能するのですね。
そういった理由で、意匠権が多くなっているのです。
ちなみに、特許制度が未発達な途上国では、意匠権や商標権が主に活用されています。
貝印の意匠出願戦略と社内体制
また貝印は、出願の仕方も一工夫があります。
シンプルな中にユニークな形状部分が含まれたデザインが特徴的なため、
製品の「全体意匠出願」よりも、特徴部分だけの権利を求める「部分意匠出願」の割合が多いです。
これにより、特徴部分を模倣されることを、効果的に防ぐことができます。
貝印が知財に力を入れているのは、
2018年発表の中期経営方針において、「顧客志向の高付加価値な商品・サービスを実現するための知財強化」が掲げられたことも大きいでしょう。
知的財産部を新たに設置し、経営の中核に「知財」を据えて全社をリードしています。
具体的には、知財情報を分析することで、競合の動向や今後のトレンド、ニーズなどを先読みして、
自社の進むべき道を社内に指し示しているようです。
また、社外に対しては、知的財産権の存在を証拠に、自社の差別化ポイントをアピールすることで、
その価値を伝えることを徹底しているとのこと。
こうして、付加価値の高い商品・サービスを提供することができます。
まとめ:差別化されたデザインの統一性がブランドを作る
コモディティ化しやすい商品を、
顧客志向で徹底分析した上で、
デザインで差別化し、
なおかつ一貫したデザインコンセプトの展開でブランディングして、
その価値を外部に伝えることで、
高付加価値な商品・サービスを実現している。
これが、貝印の強みなんですね。
☆参考☆
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol43/06_page1.html?ct=t(_2016_11_2111_21_2016_COPY_04)&mc_cid=c6cc146bab&mc_eid=4a43bb406e
https://www.jpo.go.jp/news/koho/tizai_koro/document/h31_tizai_kourou/11.pdf
https://www.kai-group.com/news/id/695
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