※2019年4月23日配信メルマガVol.16より、一部加筆修正の上抜粋
さて、4月18日は「発明の日」でした。
明治18年(1885年)4月18日に、
現在の特許法の前身である「専売特許条例」が公布され、
日本の特許制度が始まったことに由来します。
それから134年。
日本の特許制度は、日本の産業発展に貢献してきたわけですが、
特許にしても商標にしても、
少々暗い話題が多いような?気が致します。
最近話題となっているのは、
ノーベル賞学者の本庶佑先生による、
「小野薬品工業に対する、オプジーボ開発の対価引き上げ要請」
のニュースですね。
オプジーボは、本庶先生の研究をもとに誕生した、がん治療薬です。
本庶先生と小野薬品とは、このがん治療薬に関する特許を何件か共同出願しています。
例:「PD-1に対し特異性を有する物質」(特許第4249013号)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_4249013/7F413FEE198836774186273621C84DAE
(もちろん、日本だけでなく、世界各国に出願を展開しています)
そして、小野薬品が薬の販売で得た金額の一部を、本庶先生がロイヤルティとして受け取る契約をしていたわけですが、報道によると、それが売上及び他社からのライセンス料の「1%以下」だったそうなのです。
用途発明であれば、5~10%と言われていますから、常識的ではない(=低すぎる)ということで、批判されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43581020Q9A410C1EA2000/
新薬の開発は巨額のコストがかかるわけなので、
企業がリスクを背負っている以上、
発明者とはいえ高いライセンス料を要求するのはけしからん!
という考えもよくわかります。
一方、事業を行う企業がリスクを負うのは当然の話であり、
ライセンス料率を平均よりかなり低く設定してしまったのは、
問題があるといえるでしょう。
但し、本庶先生側弁護士によれば、
現在対価として供託されている金額が約26億円なのに対し、
本来受け取るべき対価の額は、約830億円になるとのことです。
https://www.asahi.com/articles/ASM4F0BRCM4DPLBJ00M.html
この金額を聞くと、日本ではちょっと多すぎない?と感じる人もいるかもしれませんね。
ちなみに、発明の価値を金額に換算することについては、
様々な方法で試みられているのですが、
なかなか決定的なものがないのが現状です。
それは、本質的に発明が「一物多価」だからだと思います。
「同一の商品・サービスに、様々な価格が設定される」という考え方で、
「ある時点における同一の商品・サービスの価格は一つしか成立しえない」
という「一物一価」に対する概念です。
つまり、発明に限らず、知的財産は使う人(企業)によって、
価値が大きく変わるものなのです。
どんなに素晴らしい発明をしたとしても、
製造手段がなければ製品は作れませんし、
顧客に届ける手段がなければ売ることもできません。
まったく同じ発明でも、
Aさんにとっては数十億円の価値があり、
Bさんにとっては無価値、ということもあり得ます。
知財をうまく活用できる土台があって、初めて知財に価値が生まれるのですね。
そう考えると、こうした発明の対価に関する争いについて、
企業側の言い分も非常に理解できるのですが、
現実的には、社会的な常識の範囲を逸脱しないようにして、
発明者の貢献への評価を示す必要があると言えるでしょう。
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