国家資格のコスト

国家資格のコスト

2022年5月1日

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私は国家資格の弁理士という資格で、
お客様の相談に乗ったり、手続きをしたりしてお仕事をしているのですが、
特に仕入れとか必要ない分、
意外に楽勝なビジネスだと思われがちなんですよね。
相談ぐらい無料で乗ってくれよと、
思っている方もいらっしゃるかもしれません。

では実際にこの資格を取るまで、
それから資格を登録するときと、
資格の登録を維持するのに、
どれくらいのコストがかかっているのか、
そして知識を身に付けるのに何をしているのかについて、
お話したいと思います。

まず資格を取る前までは、
平均して4年くらい勉強して、
予備校の費用で年間40~50万円くらいかかります。
また、受験料も1回12,000円かかります。

合格率数%の難関をくぐり抜けて、
晴れて合格したと思ったら、
「実務修習」と呼ばれる研修を30時間ぐらい受けなければなりません。
私の時はなかったんですが、
今は実務修習を修了しないと弁理士登録できないんですね。
この実務修習の費用が118,000円かかります。

そして弁理士登録するときは、
現在だと110,800円かかります。
私の時は実務修習がなかったので、
その分20万円くらいかかったと記憶しています。

で晴れて弁理士登録されました。
ここまでがイニシャルコストです。

そしてなんとそこから、ランニングコストとして毎月15,000円がかかります。
年間18万円かかっているんですね。

また、きちんと研修を受けて、5年間で何単位とか所定の数の単位も取らなくてはいけなくて、
単位を落とすと、登録が抹消されてしまう恐れがあります。
当たり前ではあるのですが、常に勉強して研鑽していくことが必要なんですね。

当然、国が仕事を保証してくれるわけではないので、
普通のビジネスと同様に
マーケティングとセールスの勉強や費用もかかります。

で、これって別に弁理士だけじゃなくて、
他の弁護士とか税理士といった国家資格も、
それから資格はないけど何かのコンサルタント、
コーチ、カウンセラー、セラピスト、
といった専門的な知識を扱っている方全般、
同じような感じだと思うんですね。

なので、自分もそうだから分かるのですが、
専門的な知識を扱っている方に、
個別具体的な相談をした場合に、
的確なアドバイスが返ってくるのには、
実は膨大な時間とお金と労力がかかっているんだ
ということなんですね。

個別具体的な質問や相談に対する回答というのは、
本とかGoogleとかで調べて出てくる情報とは
質が違うといいますか、
対価を支払うに相応しい価値があると思います。

SNSで簡単に繋がれる時代になったので、
専門家の方に気軽にいろいろ訊けるようになりましたよね。
それはいい時代になったなと思う一方、
質問に回答してくれる相手の事情とか、
そこに至るまでのプロセスにも
配慮することは大切です。

専門家の方も、意図があって無料でやるのはいいのですが、
なんか無理して無料で答えるみたいなことがあるならば、
きちんと対価を請求して欲しいです。

じゃないと疲弊して自分の仕事に誇りを持てなくなったり、
仕事を続けることが困難になって辞めてしまう可能性があります。
これは社会全体にとっても損失で、
より必要としてくれる人が困ったり、
その仕事を目指す人が減ったりする可能性があります。
自分のためだけじゃなくて、
社会のためにも正当な対価を請求するという視点は大事ですね。
もし「有料だったらもういいです」っていう人がいたら、
「この人にはご縁がなかったんだな」と気にせず次にいきましょう。

私が言うとポジショントークじゃないかと思われるかもしれませんが、
SNSでは人と人との距離が近い分、
こういうことが起こりがちなので、
相談する側も、される側も、
気をつけて欲しいなと思います。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。