価格を上げれば、脳は喜ぶ?!

2017年5月17日
持続可能なブランドコミュニケーションをつくる

「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

前回のブログの「ペプシとコーラの比較」の話では、
ブランドが意思決定にバイアスをかけるとお話しました。今度は「価格」の話です。

よく「安かろう悪かろう」などと言いますが、
ジェリー・コーリー・オルソンによれば、
商品の品質がわからないとき、
消費者は価格で品質を判断するようなのです。
(Consumer and Industrial Buying Behavior)

さらに有名な研究として、
ヒルキ・プラスマンによるワインの味覚に関するものがあります。
5種類のワインを試飲してもらうというふれこみで、
(実際は3種類のみで、2つは同じワインを2回提供される)
同じワインを2回試飲してもらい、
1回目は10ドルのワイン、2回目は90ドルのワインと告げました。

すると、ほとんどの被験者は「90ドルのワインの方が美味しい」と評価したのです。

確かに、ワインに造詣が深いと思われたい “見栄” や、
高い方が美味しいはずといった “思い込み” もあるかもしれませんが、
じつはそれだけではないのです!

その時の脳の働きをfMRI(ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つ。wikipediaより)で見てみると、
快感と強く結びついた脳の領域に、大きな違いがみられたのです。

すなわち、10ドルの方では、この領域の脳の活性化がほぼ見られなかったのに、
90ドルと思った時には、かなり活性化した=本当に快感を得ていたのです。高価格の提示により、期待値が上がることで、
実際の味覚にも影響を与える、というわけですね。

これは、被験者がワイン通であっても、同様の影響がみられるそうです。
人は、外部からの信号をありのままに受け取るのではなく、
何らかの”解釈”を通して知覚している、と言えます。

京セラの稲盛和夫さんは「値決めは経営」とおっしゃいますが、
商品やサービスの価格設定は、脳が下す評価にも影響を与えているんですね。

ということは、「いいもの安く!」というのは、本当に正しいかどうか疑った方がいいと思います。「いいものこそ、自信のある価格」をつけた方がよいと思うのですね。
お客さまのためにも、会社のためにも、従業員のためにも。
「価格」って、「格に価(あたい)する」と書きます。
「価」は「お金の価値、お金に換算できる値(あたい)」ですね。

もちろん、中身がないのに高値をつけるのは詐欺ですが、
安くすれば喜ばれるというのは、「商品・サービスに価値を感じて喜んでいる」のではなく、「安く買えた自分(お客さん自身)のすごさ」に喜んでいるのかもしれません。
価格は、お客さまに価値を感じていただくためのもの」と考えて、
値付けしていきたいですね。

ちなみにその8週間後、今度は価格を示さずに、
同様に5種類のワインを試飲させた(実際は3種類のみで、2つは同じワインを2回提供される)ところ、
同じワインに評価の差が見られなかったそうです。

やはり、価格が知覚を左右しているといえますね。