「ドラゴンボール外伝」に学ぶ「二次創作」の可能性

2017年5月21日
持続可能なブランドコミュニケーションをつくる

「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

「ドラゴンボール外伝 ~転生したらヤムチャだった件~」
をご存知でしょうか?
集英社のアプリ「少年ジャンプ+」で読める漫画ですが、
作者は「鳥山明」先生ではなく、「ドラゴン画廊・リー」先生。
なんと、公式の”パロディ作品(二次創作)”なのです。(集英社のHPより↓)
〈前編〉
https://shonenjumpplus.com/episode/10833497643049550354

〈中編〉
https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480028878408(後編は未発表)

少年時代に原作が好きだったからか、
「もし○○だったら」という設定だけでワクワクしますし、
こういうのはめちゃくちゃ面白いですね。
絵も本物さながら。
脇役の「ヤムチャ」が主人公な点もツボです。
よくよく考えたら地球人最強なんですよね(孫悟空はサイヤ人です)。
早く後編が読みたいです。

ところで、パロディといえば、いつも著作権が問題になります。
漫画作品でしたら、
漫画を印刷や写真などの方法によって有形的に再製する「複製権」、
ウェブ上で配信する「公衆送信権」、
翻訳したり変形したりして二次的に創作する「翻案権
などがかかわってきます。

原作の内容や題号を作者の意に反して勝手に改変されない「同一性保持権」という人格権もあります。

こちらは「公式」ということなので、そのあたりもクリアしている「二次創作」なのです。

「二次創作(二次利用)」って、著作権の財産的価値を高めるための、現在のトレンドのキーワードだと思うのですね。
昔は、原作者・著作権者がコンテンツを生み出し、育てて、マーケットを広げていくものでした。
今は、原作のファンやユーザーが、原作に新しい価値を付加して、マーケットが広がっていく傾向が顕著です。

原作側・権利者側からすれば、新たな話題ができれば、それだけメディアにも取り上げられて露出が増えますし、自ら創作活動をしなくとも新しいファンを獲得するチャンスにつながるわけです。
ユーザー側・二次利用側からすれば、原作の知名度を利用しながら、コンテンツを創ることができる。
さまざまなメリットが考えられます。

とくに漫画のようなコンテンツは、今は「大人」向けの市場が注目されています。
子供の時に大好きだった漫画が新しい形で生まれることで、大人になって一度は離れたファンも戻ってくるのですね。
こちらの記事もご参照ください)

またあらゆる業界に通じることですが、
マーケティングは、”事業者⇒顧客” の一方通行から、
“事業者⇔顧客” の双方向のコミュニケーションへと進化していますし、
なんでもかんでも、二次利用禁止!とすれば、かえって市場を狭めてしまうリスクも考慮しなければなりません。

もちろん、ユーザーが原作に付加価値をつけるとしても、許諾がなければ著作権侵害ということになります。

原作側としても、むやみにユーザーの改変を認めるとすると、
原作の築いてきた世界観が失われて、もともとのファンを失ってしまうおそれがありますから、
その場合は厳正な対処が必要になります。

このバランス感覚が、新しい時代の著作権とビジネスを考えるうえで大切なのですね。

知的財産権についての捉え方も、
「独占排他的な権利」という従来の考え方から、
利用をコントロールできる権利」という考え方にシフトするときなのだと感じています。