※2020年7月28日配信メルマガVol.82より抜粋(一部加筆修正あり)
シャープのマスクが人気
コロナ禍では、これまでの商品・サービスとは大きく異なる商品・サービスを提供し始める企業が増えました。
電気機器製造販売の大手「シャープ」もそのうちの1社。
元々は影響パネルを主力とし、テレビやLED、白物家電のメーカーとして有名ですが、
今回「不織布マスク(MA-1050)」を販売したことで、非常に話題になりましたね。
モノは至って普通の、50枚入り立体三重構造を採用した不織布(ポリプロピレン)マスク。
価格は2,980円(税別、送料別)と、やや値は張りますが、
液晶パネルを製造する三重県多気工場のクリーンルームで製造された高品質なものです。
そして何より、「SHARP」のロゴ入りということで、
台湾鴻海の傘下に置かれたとはいえ、
日本生まれの歴史ある企業の根強いブランド力により、
多くの人気を集めました。
第1回の抽選では、3万箱の抽選販売に対し、なんと470万人が応募し、
急遽4万箱に増量することとなったのです。
抽選に当たった人たちは、「当選メール」のスクショや商品の写真やレビューをこぞってSNSにアップし、
それがさらに人気を呼び、13回目を終えた抽選販売もいまだに当選倍率は約100倍。
7月29日には第14回目の抽選で8万7千箱を用意するとのことです。
シャープがいまだにマスクを販売し続ける理由
さて、すでにマスクの供給が行き渡っている現在、
シャープがいまだにマスクを販売し続けるのはなぜでしょうか?
マスクの高額転売を今後発生させないため?
社会的に有意義なことをすることで、注目を集めたいから?
せっかくの生産設備を無駄にしないため?
もちろんそれもあるでしょうが、
もっと重要な理由があります。
それは
「顧客リストを集めるため」
です。
「顧客リスト」は、今まで商品やサービスを購入してくれた人の情報を整理したもの。
初めて接点を持った人よりも、一度でも商品・サービスを買ってくれた人の方が、
再度購入してくれる確率が高いのは、マーケティングの鉄則とも言えます。
一説によると、新規のお客さんに売るよりも、
既存のお客さんに売る方が、5倍も楽で効率的なのだとか。
江戸時代の商人も、
「火事になっても顧客台帳だけは抱えて逃げろ」
と言っていたぐらい、昔から大切に扱われてきたなものですね。
シャープでマスクを買った人の中には、
シャープの電気機器は購入したことのない人も含まれていたことでしょう。
そういう新しい顧客のメールアドレスや住所といった情報を、
一気に集めることができたのが、この「マスクの販売」の最大のポイントなのです。
これらの新しい顧客に、シャープの新製品の情報を流せば、
そのうちの何%かは購入します。
そうすれば、マスクなんかよりもっと単価の高い製品を売ることができ、
さらに販売のデータも残るので、
マーケティングとしては成功なのです。
メーカー直販にこだわった理由
さらに、従来シャープのような家電メーカーは、量販店やECサイトで販売するのが通常でした。
しかし、これでは顧客情報は量販店やECサイトの元に留まり、
効果的なマーケティング施策を打てなかったのではないかと思います。
顧客が何を必要としているかがわからないし、予測もつかないからですね。
今回は、メーカー直販「のみ」でマスクを販売していることから、
かなりの顧客情報を手元に残すことができました。
(抽選に外れた人の情報も持っていることでしょう)
これにより、今後はビッグデータを元にして、
製品開発やマーケティングがしやすくなったのではないでしょうか。
直近の20年1-3月期(4Q)では、営業益、経常益、純利益、ともに赤転してしまったシャープですが、
これを機になんとか復活して欲しいものです。
「SHARP」のロゴはすでに「衛生マスク」の分野でも守られていた
ちなみに、シャープは、
今年の3月3日に、「SHARP」のロゴを「衛生マスク」の分野で商標出願しています(商願2020-22732)が、
実は33年前の1987年に、
同ロゴを「衛生マスク」の分野で「防護標章登録」しています(第1111387号防護第12号)。
「防護標章登録」というのは、「商標登録」と違って、
自社が使用する分野(又は類似する分野)について登録するのではなく、
自社が使用しない分野についても、
自社の著名な商標を、他社に使用されたり商標登録されたりしないために、
登録して法的に保護する制度になります。
シャープは当初「衛生マスク」の販売を想定していなかったわけですが、
「SHARP」のロゴが著名になっていたため、そのブランドを守るべく、
「衛生マスク」を含めた自社の使用しない分野で「防護標章登録」をしたのです。
今回のコロナをチャンスにして、「SHARP」ロゴのマスクを販売できたのも、
この「防護標章登録」を維持し続け、
他社による「SHARP」の商標の使用や商標登録を防いできたおかげかもしれませんね。
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