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著作権

タトゥー(刺青)にも著作権

★ボクサーがタトゥー隠しすべきもう1つの理由?

この間、プロボクサーのタトゥー(刺青)が問題になりましたね。
タトゥー自体が禁止というわけではなく、
リングに上がるときは隠して観客に不快の念を与えないことが求められていた、とのことでした。

ここで、知的財産の専門家として、別の視点でタトゥー隠しの必要性を考えました。
というのも、タトゥーも「思想又は感情を創作的に表現したもの」であれば、
美術の著作物に該当するから、著作権が発生しているのです。

ということは、タトゥーの彫師や、彫師から著作権を譲り受けた本人等の許可を得なければ、
勝手にTVやネットで放送できない、ということになります。
そういう視点でタトゥー隠しすべきだ!と発言してる人がいなかったので、
ちょっと言及してみました。

★自分のタトゥーも勝手に使えない

今のは半ば冗談としても、実際にタトゥーの著作権をめぐって、
問題が起きたことがあります。

作家の鬼塚康さんが書いた「合格!行政書士 南無刺青観世音」という本の表紙に、
ご自身の身体に彫ったタトゥーの写真を掲載したのが、事の発端でした。

なんだか、行政書士にタトゥーに著作権にと、
情報量が多くて渋滞してますが、
丁寧に解説しますね。

そのタトゥーは十一面観音立像の絵柄なのですが、
表紙に掲載された画像は、実物を白黒反転の上、
セピア調に変色させたものだったのです。
つまり、彫られた絵柄を改変して掲載したものでした。

★著作者人格権

これに怒った彫師の方が、
著者の鬼塚さんと出版社を相手に、
「著作者人格権」の侵害を根拠に、訴えを提起しました。

(東京地裁平成23年7月29日判決平成21年(ワ)第31755号損害賠償請求事件)

クリックして081541_hanrei.pdfにアクセス

つい、自分の身体に彫ってもらった絵柄は、
自分のものと思いがちですが、
著作権や著作者人格権は彫師のものなんですね。

ここで「著作者人格権」というのは、
「著作権」とはまた別の種類の権利で、
創作した人だけが持っている権利です。
「著作権」の方は、財産的価値を守る権利で、
他人に譲渡できるのに対し、
「著作者人格権」の方は、人格的な価値を守る権利で、
他人に一切移転できない点で異なります。

そして「著作者人格権」には、
「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」
の3つの権利があります。

★事件の結末

彫師の方は、
①「自分に無断で本の表紙として公表した」ということで「公表権」侵害
②「自分の氏名が表示されてない」ということで「氏名表示権」侵害
③「自分の彫った絵柄を改変している」ということで「同一性保持権」侵害
を訴えました。

このうち、
①の公表権侵害については、認められませんでした。
「出版の前に、彫師自らがタトゥーの写真を雑誌広告に掲載していた」
という理由です。

一方、②の氏名表示権侵害については、認められました。
「本の表紙に全面的に掲載され、読者の興味や関心を高める目的でタトゥーを利用してるから、
作者名を主張する利益を害する恐れがないとは言えない」
という理由です。

さらに、③の同一性保持権侵害についても、認められました。
「陰影が反転しセピアの単色に変更されていて、彫師の意に反する改変であると認められる」
という理由です。

こうして、著者と出版社に対する著作者人格権侵害が認められ、
損害賠償金48万円の支払を命じられました。

★彫師に確認を

以上より、タトゥーにも著作権が発生することがあるので、
勝手にSNSなどに写真を載せるだけでも、
一応問題のある行為だと言えます。

したがって、タトゥーを彫ってもらった人は、
きちんと彫師の方に確認をして、
著作権を譲渡してもらうことと、
著作者人格権を行使しないことを、
書面などで確約をとっておくのが無難なのではないかと思います。
https://stand.fm/episodes/6029efbd428c1b4bf2bb2af1

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。

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