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震災とミッフィーの深イイ話

「サムライツ®」の弁理士、保屋野です。

今日は平成30年3月11日、東北の大震災が発生してから丸7年ですね。
改めて、15,895名の犠牲に遭われた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、 2,539名の行方不明者が一人でも多くご家族のもとに帰られることをお祈りし、
今でも避難生活を続けておられる7万3349名の避難者の方へ、お見舞い申し上げます(平成30年3月9日現在)。

さて、震災にまつわる知財のエピソードというと、
私はうさぎのキャラクター、「ミッフィー」を想い出します。
ニュースでも話題になったので、ご存知の方も多いかもしれません。

「ミッフィー」は1955年にオランダで生まれ、3年前に還暦を迎えた、世界中で愛されているうさぎのキャラクターです。日本では絵本の「うさこちゃん」で有名ですが、本国オランダでは「ナインチェ」の名で親しまれています。
温かみがあり、直線的でシンプルなデザインはとても特徴的ですよね。直線的とはいえ、微妙にふるえて描かれているのは、心臓の鼓動のように個性を表したのだ、とのこと。そして、いつも正面を向いているのは、絵本を読む子どもたちに「いつも見ているよ」というメッセージがあるのです。

そんなこだわりを持つ作者のディック・ブルーナさんは、
残念ながら昨年の2月16日に亡くなりましたが、
86歳だった2014年7月30日まで現役で創作活動をされていました。
その出版物は50以上の言語で8,500万部も販売されています。

1971年より、オランダのメルシス社が、ブルーナさんの著作権とミッフィーに関する商標権を管理しているのですが、2010年11月2日に事件が勃発します。
アムステルダム地方裁判所が、日本のサンリオのキャラクター「キャシー」が、「ミッフィー」に関する著作権及び商標権を侵害しているとの理由で、差し止め仮処分命令を下したのです。

ミッフィー(左)とキャシー(右)

(㈱サンリオ2011 月6 月7日付プレスリリース「メルシス社(オランダ)と株式会社サンリオの係争和解合意について」より引用)

サンリオ側は権利侵害していない旨の異議申し立てを行いましたが、
メルシスが本案訴訟、サンリオが「ミッフィー」の商標権の取消訴訟を提起し、
両者の争いはヒートアップしていきました。

シンプルなデザインは、モチーフが同じだと似やすいので、
一般論としては何ともいえないのですが、
こちらのキャシーは、口を描かない表情のみならず、
胴体の形も似ているので、ちょっと苦しい感じはします。

そんなときに東北の大震災が発生。
世界中から哀悼の意が表明され、ブルーナさんも
「日本の皆様へ思いをこめて ディック・ブルーナ」
というシンプルなメッセージと、白黒で描かれた涙のミッフィーの絵を送って、
深い哀しみを表現してくれました。

涙の白黒ミッフィー

(㈱サンリオ2011 月6 月7日付プレスリリース「メルシス社(オランダ)と株式会社サンリオの係争和解合意について」より引用)

そして争いを続けていたメルシス社とサンリオも、
訴訟に費やす両者の諸費用を、むしろ日本の復旧・復興のために寄付すべきだ
との結論に至り、和解。
係争中の全訴訟を取り下げ、両者共同で15万ユーロ(約1,750万円)を震災への義援金として寄付しました。

知的財産権は、他者を市場から排除することのできる強力な権利であります。
模倣品や類似品を排除することで、企業は利益を保つことができ、
市場において公正かつ自由な競争秩序を維持することができます。
また、1つの知的財産から生まれた収益を投資に回したり、従業員に支払ったりすることで、
さらに新しい知的財産、そして世の中に価値を生み出すことができるのです。

しかし、メルシス社とサンリオのこの結論は、
「知的財産にはこんな力もあるんだ!」
と全く新しい可能性に気付かされた、
私にとってまさにパラダイムシフトの瞬間でした。

だって、単に訴訟を取り下げただけでなく、
“両者共同で”義捐金の寄付に至ったのですから。

向かい合っていた互いの向きを90度変え、同じ方向を向かせる力があったのです。
子どもたちの笑顔を創る、キャラクターの知的財産だからこそ、かもしれませんね。

これ以降、私はますますミッフィーに感情移入してしまいました。
震える線で描かれ、まっすぐこちらを見るミッフィー、
その眼の奥に、深い愛情を感じずにはいられませんね。

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